私は語学留学で、カナダのバンクーバーに滞在していた。
この街は、とにかく雨が多い。
11月から4月頃までは雨季で、ほぼ毎日、しとしととした雨が降ったり止んだりを繰り返す。
空もどんよりしていて、日本の「晴れ」とはまた違う空気感だ。
ノースバンクーバーに来て最初に感じたのは、木々の高さ。
自然がとにかく豊かで、背の高い木々に囲まれた景色に感動したのを覚えている。
日本にいると当たり前にあるものも、場所が変わると全然違って見える。
そんな生活の中で、私が衝撃を受けたことがある。
――誰も傘をささない。
ある雨の日、通学のためにバスに乗ったときのこと。
車内の床や座席が、やたら濡れている。
ここでちょっとした豆知識。
バンクーバーのバスの座席は、プラスチック素材でできている。
日本のような布張りではない。
つまり、水を吸わない。
だから濡れたまま、そのまま残る。
誰かが濡れたまま座る。
→そのまま降りる
→座席びしょびしょ
という状態が普通に起きる。
いや、拭いてから降りろよ!!!
座れる席があるのに、濡れていて誰も座らない。
みんな立っている。
ていうか、なんでこんなに濡れてるの??意味わからん。
答えはすぐに分かった。
――ほとんどの人が傘をさしていない。
フード付きの服を着て、フードをかぶるだけ。
顔は守れているかもしれない。
でも、体は普通に濡れている。
その状態で座れば、そりゃ座席も濡れる。
実際に、また一つ座れない席が増えた。
この光景に、正直かなりイライラした。
バスを降りてから、私は傘をさした。
周りを見ていると、少しずつ気づくことがあった。
アジア人や女性は傘をさしている人が多い。
でも欧米系の人や男性は、かなりの確率で傘をささない。
これが文化の違いなのか。
と初めて実感した瞬間だった。
バンクーバーの雨は、しとしととした弱い雨が多い。
日本人からすれば、普通に傘をさすレベル。
でもカナダ人にとっては、
「この程度なら大丈夫」
という感覚らしい。
じゃあ、なぜ傘をささないのか。
正直なところ、理由は分からない。
面倒だからなのか、気にしていないのか。
結局、誰にも聞かないままだった。
そういえば、私は大きい傘を日本から持ってきていなかった。
現地で買えばいいと思っていたからだ。
ある日、ダウンタウンのドラッグストア「London Drugs」に行ってみた。
でも、可愛い傘が全然ない。
黒、ネイビー、透明、そしてやたら大きくて重い。
日本のようなカラフルで軽い傘とはまるで違う。
がっかりした。
次に「Hudson’s Bay」にも行ってみた。
種類は増えたけど、やっぱりピンとこない。
結局、私は傘を買わなかった。
そして3ヶ月後――
まさかの。
小雨の中、
傘をささずに学校へ向かう自分がいた。


コメント