それは、留学してまだ間もないころの話。
当時の私は、英語どころか海外生活そのものに全然慣れていなかった。
そして何より――
まだ、日本人と韓国人の見分けすらついていなかった。
学校にはアジア人留学生がたくさんいたけど、
正直みんな同じに見えていた。
そんなある日。
仲良くなった韓国人の女の子と、初めて一緒に遊ぶ約束をした。
当時ちょうど、バブルティー(タピオカミルクティー)が流行っていて、
「一緒に飲みに行こう!」
と誘ってくれたのだ。
その子はウェストバンクーバーの親戚の家に滞在していたので、
私たちは中間地点くらいにある、ライオンズゲート近くのショッピングモールで待ち合わせをすることになった。
そして当日。
無事に合流し、ショッピングモール内を少し見て回った。
…とはいえ。
まだお互いそこまで英語が得意ではない。
会話もどこかぎこちない。
でも、「海外でできた初めての友達感」があって、
私は少し嬉しかった。
そして30分ほど経ったころ。
いよいよ目的のバブルティー屋へ向かうため、
バス停までやって来た。
――その時だった。
ちょうどそこへ、
いつも私が利用している馴染みのバスがやってきた。
私の足はごく自然とそのバスへと向かった。
「待って。このバスじゃないと思うんだけど…」
恐らく彼女はそんなことを言っていたと思う。
しかし、なぜか私は、
「いや、(私のバスは)これであってるよ?」
と返した。
でもなぜか彼女は困惑している。
そして何か言いたげな様子。
(友人)「でもこのバスでは行けないと思う…」
(私)「え、でも私はいつもこれに乗ってるよ?」
なぜか話が噛み合わない。
何か大事なことを見落としている気がする。
けどそれが何かわからない。
でも何かが違う…。
――それもそのはず。
そのバスはノースバンクーバー行き。
私が家に帰るときに使っているバスだ。
(私)「早くしないと発車しちゃうよ!」
(友人)「え、でも、、、」
ドアの前で友人は困惑したまま乗ろうとしない。
そのかわり、必死に私に何かを伝えようとしている。
しかし友人もまた、英語がうまく話せない。
私も、すっかり混乱していた。
友人はウェストバンクーバーに住んでるから、
このバスには乗らない…って言いたいのかな?
いや、でもまだ会ったばっかりだしな…
でも早くしないとバスが出ちゃう!
というか、
――私たち、今何をしようとしてるんだっけ??
もう完全におかしな心理状態(笑)
正解がわからない。
2人して、意思疎通がうまく出来ない。
何てもどかしいんだろう。
見た目は日本人と変わらないのに。
なぜか日本語が通じない。(当たり前だけど)
それが何とも不思議な感覚だった。
そしてついに、痺れを切らした私は、
そのバスに一人で颯爽と乗り込んでしまった。
私が乗れば友人も付いてきてくれるかと期待して。
でも友人はバスには乗らずに、こう言った。
「私、バブルティー飲みたいんだけど…!」
――――あ。
そうだった。
本来の目的を思い出したのと同時に、ドアが閉まった。
お前ら、今からタピオカ飲みに行く約束だっただろ。
何で帰ろうとしてるんだ…?
でもその時の私は、
なぜかそれが自然だと思っていた。
すると、取り残された韓国人の友達が、
「オーケー…バイ(bye)…」
と、寂しそうに小さくぽつり。
やっちまった、と思った。
でも時すでに遅し。
バスはそのまま発車した。
私はその子をバス停に置き去りにしたまま、
会ってたった30分で一人で帰宅することになった。
私、超サイテーじゃん!
しかも当時は、まだ携帯電話を契約する前で、
お互いに所持していなかった。
だから帰宅中、
「やばい、どうしよう…」
「なんで私は帰ってるんだ!?」
と、一人で大パニック。
とにかく謝らなきゃと思い、
帰宅後、ドキドキしながら彼女の滞在先に電話をかけた。
でも、まだ英語がほとんど話せない。
とりあえず、
「Sorry」
という気持ちだけはどうにか伝えた。
でも、
なんでこうなったのか、
別に帰りたかったわけじゃないこと、
自分でも意味が分からないこと、
をうまく説明できない。。。
それが本当にもどかしかった。
それにしても当時の私は、
日本人と韓国人の見分けが全然つかなかった。
学校でも、見た目がほぼ同じに見えるので、
つい日本語で話しかけそうになる。
でも当然通じない。
「おかしい。何で通じないの!?」
「見た目日本人じゃん」← 関係ない(笑)
とよく思っていた。
でも留学生活が長くなると、
ハッキリとした違いが分かってくる。
服装。
メイク。
雰囲気。
イントネーション。
気づけば、いつの間にか日本人と韓国人は
簡単に見分けがつくようになっていた。
そして彼女とも、3ヶ月後にはすっかり打ち解け、
英語でのコミュニケーションも取れるようになっていた。
あの時の話は今ではすっかり笑い話になっている。
…まぁ、
初めてできた韓国人の友達を、
まさか30分で置いて帰るとは思わなかったけど(笑)


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