留学中にカナダ人の彼氏ができた。
……と聞くと、
なんだかロマンチックな響きだけど、
実は出会いのきっかけは恋愛ではなかった。
ランゲージエクスチェンジである。
ランゲージエクスチェンジとは、
お互いの言語を教え合う交流のこと。
日本語を勉強したい外国人と、
英語を勉強したい日本人がペアになり、
お互いの言語や文化について教え合う。
最近ではアプリもたくさんあるけれど、
当時はネットの掲示板やコミュニティサイトなどで相手を探すことが多かった。
ただ、私はランゲージエクスチェンジに対して
少し警戒心を持っていた。
理由は単純。
日本で一度ひどい目に遭ったからだ。
カナダへ行く前。
少しでも英語を使う機会が欲しくて、
あるカナダ人男性と会う約束をした。
待ち合わせ前に、
「一緒に食べるケーキ買ってきて」
と言われ、
なら「お前が用意しろよ!」
と思いながらも結局自分で買っていった。
そして待ち合わせ場所へ向かい、いざ対面。
するとその男、
挨拶もそこそこに、
いきなり抱きついてキスしようとしてきた!
しかもフレンドリーな挨拶のやつじゃない。
完全にアレなやつ。
私は咄嗟に避けた。
すると相手は、
「だって英語教えて欲しいんでしょ?」
と言い放った。
いや心の底から意味がわからないし、マジできもい。
英語を教えることとキスに何の関係があるのか。
頭の中が完全にフリーズした。
でも当時の私は英語もほとんど話せない。
「NO…」
と言って抵抗するのが精一杯だった。
そしてその男、
私が買ってきたケーキだけ持って去っていった。
本当に腹が立った。
というか、
私のケーキ返せよ!
今思い出しても腹が立つ。
だから私は、
「ランゲージエクスチェンジ=ちょっと危ないかも」
というイメージを持っていた。
なので、もしこれから利用する人がいるなら、
相手選びは慎重にした方がいいと思う。
そんな経験があったにもかかわらず…
留学半年ほど経った頃、
私は再びランゲージエクスチェンジを始めた。
理由はいくつかある。
まず、もっと英語を使いたかった。
そしてもう一つ。
正直に言うと、
「あわよくば彼氏ができたらいいな」
とも思っていた(笑)
当時の私は外国人の彼氏や国際結婚に憧れていた。
だから相手を探す時も、
どうせなら異性のカナダ人がいいと思っていた。
もちろん見た目重視ではなく。
むしろ逆だった。
いかにも遊び慣れてそうな人は避けたかった。
そして何人かやり取りをした中で、
一人のカナダ人男性と会うことになった。
彼は26歳。
ケベック州出身で、
バンクーバーでプログラマーとして働いていた。
初めて会ったのはダウンタウンのカフェ。
正直な第一印象は、
「真面目そうな人だな」
だった。
見た目はごく普通。
イケメンでもないし、ブサイクでもない。
どちらかというと地味寄り。
当時かなり面食いだった私のタイプでもなかった。
でもそれが逆によかった。
誠実そうだったから。
少なくとも、
ケーキ泥棒の勘違い野郎よりは百倍安心できた。
カフェではそれっぽく英語や日本語について話した。
でも今思うと、
お互い言語交換に集中していたかというと微妙である。
なんだか二人とも少しソワソワしていた。
そして家に帰ると、夜はメッセンジャーでチャット。
毎日のようにやり取りをしていた。
すると不思議なもので、
会う回数が増えるたびに距離も縮まっていった。
3〜4回目くらいだっただろうか。
その頃にはお互い好意を持っていることが
何となく分かっていた。
そして気づけば彼の家へ遊びに行くようになり、
その後自然と恋人関係になった。
付き合い始めてからは、
ほぼ毎週末一緒に過ごした。
いろんなレストランへ行った。
映画も見た。
スタンレーパークでローラーブレードもした。
水族館へも行った。
家で一緒に料理を作ったり、
まったり映画を見たりもした。
そして一番印象に残っているのは、
ヴィクトリアへの小旅行。
ホエールウォッチングに行ったのだ。
海の上でクジラを探しながら、
「ああ、私今本当にカナダにいるんだなぁ」
と思ったのを覚えている。
当時は本当に彼のことが好きだった。
でも、その恋愛は長くは続かなかった。
付き合って3か月ほど経った頃。
彼が仕事の都合でケベック州へ戻ることになった。
私もあと3か月ほどで日本へ帰国予定。
遠距離恋愛という選択肢は、
お互い現実的ではなかった。
だから悲しかったけれど、
意外と冷静に受け入れていた。
そして私たちは別れた。
それから約2年後。
驚いたことに彼から連絡が来た。
なんと東京で仕事が決まり、日本へ来るという。
しかもゴールドマン・サックス。
当時の私なら飛び上がって喜びそうな展開である。
だって私は昔、本気で国際結婚に憧れていたから。
外国人の彼氏が欲しかったし、
できれば将来は海外で暮らしたいとも思っていた。
だから数年前の私なら、
「これは運命かも!」
とか思っていたかもしれない。
でも実際に再会してみると、
びっくりするくらい何も感じなかった(笑)
もちろん嫌いになったわけではない。
でも恋愛感情やときめきは完全になくなっていた。
不思議だった。
当時は本当に好きだったのになぁ…。
でも今なら理由がわかる。
海外で生活したことで、日本の良さも見えた。
留学を通していろんな国の人と交流をしたことで、
日本人やアジア人男性の良さにも気づいた。
そして結婚観も変わった。
留学前の私は、
「外国人彼氏がいたら素敵」
と思っていた。
でも留学後の私は、
「外国人だから好き」
ではなく、
「その人だから好き」
と思うようになっていた。
だから今振り返ると、
あの時の恋愛は確かに本気だった。
本気だったけど、
少しだけ…
カナダマジックにかかっていたのかもしれない(笑)


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